『アデル ブルーは熱い色』アブデラティフ・ケシシュ
女の子たちが会話をしていってすすむ大好きなタイプの映画、だし、ほんとに2人がめちゃくちゃ可愛くて美しいから飽きない。
映画って、ストーリーがキャラを動かすものと、キャラがストーリーを動かすものに別れる気がするけど、(断然後者が好き)
前者で好きなやつあるかなって考えて、やっぱ難しいだろうなってなった。
前者はやっぱり減点方式になってしまう。
ある程度、原作ありきの作品なんかで起きがちな気はするけど、このキャストがぴったりバツグン!ってなったところで、彼らは想定した彼らではないし、ストーリー上で必要な展開のために彼らが言いそうにないことを言わされたり、やりそうにないことをやらされてたりすると、ぐううとなる。
アデルも原作あるみたいだけど、本当に彼女たちが彼女たちなりに交わしている視線や会話や光の1つ1つが綺麗でずっと流してたって構わない。
あと女の子がお行儀悪くご飯を食べたりするシーン(大好き)化粧っ気ないのにデートのときちょっとオシャレする感じ、漠然とさみしくて、肯定したくないけど確信のあるイヤな予感を台無しにすることでしかじぶんを救えない感じ、妙なリアルさが上手くて良かった。
"美術に美しくない美術なんてない"
『マジカル・ガール』 カルロス・ベルムト
これは本当めちゃくちゃ面白かった。
フランス映画で映像や言語が素晴らしく心地よくてカッコイイのはさておき、ずっとただならぬ緊張感が漂ってるのもとても良い。(それが常につんのめるような感じでもなく、かと言って汗をかくようなイヤさでもない)お話の伏線も本当に本当にお見事。
映像で「わざと映さない」モチーフが多く登場するのだけど、「アッこれをまたわざと映してないぞ」と頭の中で言語として処理した瞬間に、別の象徴的な意味の文脈が生まれて、それが観てる映像とリンクしてくる。めちゃくちゃ脳が気持ちいい!
単に映像的な伏線も多くて楽しいし、ネタバレになるからあまりもう何も言えないけど、観た人ととても話したい映画。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』デヴィッド・フィンチャー
観終わってから、あっフィンチャーだった!って思い出した。
まだ観てないブラピとフィンチャーの組み合わせ『セブン』も近いうちに観たいなと思ってる。
3時間くらいある映画だったけどロードオブザリング的な疲れ方はしなかった。
CG技術が一体どうなってるのか分からない所が多くて、それが本当すごい。
お話自体は、もう出だしや設定からけっこうつらいし、結末も想像通り分かりきってつらいし、映画中も割と終始つらいので、わざとらしいしあわせなシーンでウッとなってしまう。
フィンチャーのフィンチャー的な(?)刺さりまくってくる分かりやすくトンがったメッセージ、(とは言ってもやっぱり強いセリフは多いけれど)がある、とゆうよりは、
観終わった人が後で、映画の中にそれぞれに散りばめたところから好きなのを拾って読んでもいいよ、に近い気がする。
物語化して保存すること、で何か一つ踏ん切りがつくようなこととか、キャラクタが分かりやすく意味付けられてはいるけど、本当はどんな私たちも一点のどこかでしかすれ違えないようなこととか。
ゴーン・ガールやファイトクラブもそうだけど、(この2つが特に好き)
映画の視点みたいなことをフィンチャーの映画でよく考える。
例えば登場人物の視点だったとしても、その登場人物の視点からわざとすこしズラして撮ってあるというか、(現在の視点と違う時間軸の独白が入るとか、一般的なカメラ視点とその一人称の視点がダブる時間が少し長めに撮られるとか) ギリギリサブリミナル超えるあたりが常にモヤモヤ何かを言ってくる。
本来映画のレンズって、あくまでも透明に、観る人に意識させないように出来てると思うんだけど、それをちょっと違和感あるくらいの存在感にさせられてるせいで、
登場人物に共感する、しない、に飲み込まれる前に(もしくはあっさり通り越して)登場人物に何か言われているような気になったり、アレ、物語において今の私のこの視点は何者なんだろう、(物語にいないって分かってはいるのに考えちゃう)って要所要所で自分の存在が浮き上がってしまうようになってる。それくらい没頭させられてるとも言えるけど、それともまた違う引き剥がされた感じ。のめり込まされて放り投げられるような。
君は誰で何してるの?って
『ダージリン急行』 ウェス・アンダーソン
ウェスアンダーソンの作品はどんどん新作から遡ってて、(グランドブダペストホテル、ムーンライズキングダム) ウェスアンダーソンルールが洗練されて行く前を拾って行くような体験をしてる。
色彩の組み合わせと配置が美しいこと、小物にこだわること(それがキャラクタを表すこと)なんかはヤッパ健在で、並びのアンバランスとおかしい感じ(本人たちは真面目)な平和シュールとギリギリ間延びしない長回しとか、笑いそうで笑い出せないくすぐったい感じ、そんな絶妙なところが好きですよー!!とゆうのはダージリン急行もそう。
操作され尽くしてる記号や対称性に凝ってないからこそ出来上がってる要素もあって、ウェスアンダーソンがウェスアンダーソンしていく過程を観れた感じで嬉しかった。(さらに作品を遡ったらまたこれがはじまりだ!って思う気もする)
ぶった切られてる全く別の時間と場面を壁を作って無理やり跨いでいくやり方も、本当はかなりめちゃくちゃ強引なのに、絵本のページをめくるようなゆるくて軽やかなエネルギーですんなり映像が読めるようにしてるんだから、そういう脳のスイッチを観客に知らないうちに引っ付けてるウェスアンダーソンはすてき。
次はザロイヤルテネンバウムズみたいな、と思ってる。